日報ビジネス株式会社発行の「季刊シール&ラベル」39号が発刊され、弊社代表によるコラム「入門 インキの話」が掲載されています。
第8話となる39号は「特色(特練色)の作り方」と題して、色合わせの極意と秘訣を理論的な観点から解説しています。ぜひご購読下さい。
皆さまにご好評頂いた本コラムですが、掲載誌「S&L」が残念ながら休刊となるため今回を持って終了となります。ご購読下さった皆様に感謝申し上げます。
特色(特練色)の作り方――
色合わせの基礎知識を学ぶ
久保井伸輔氏 + S&L編集部
印刷ではプロセスカラー(C=藍、M=紅、Y=黄、K=墨)の4色では再現できない色を表現する場合、インキを調合して特色(特練色)を作り対応するケースがある。特に、シール・ラベル印刷の現場ではスポットカラーや2色印刷が多く、頻繁に特色(特練色)を調合することが多い。そこで今回は、色合わせの基礎知識を学ぶことにする。
*久保井伸輔氏(久保井インキ代表取締役社長)の発言箇所は太字に
最低8色+メジュームで約95%の色をカバー
前回は「減法混色」と「加法混色」の原理を学んだ。小学校の図画工作の教科書で、色の3原色を「赤」「青」「黄色」と学んだ人は多いはずだが、実際にはそれは間違いであるということを理解することができた。
では色材を使い、どのように色合わせをすべきなのか。
「プロセスカラーのインキ3色(黄・紅・藍)を混ぜると黒(墨)になる。黄と藍を調合するとグリーンになり、黄と紅を調合すると赤、紅と藍とではムラサキになる。さらに、『減法混色』の原理から、黄とムラサキを調合すると黒、同じく藍と赤、紅とグリーンでも黒になる。ただし、黒と言っても正確にはグレーに近い。
また『減法混色』の原則からすると、特色の調合では色数が多くなればなるほど汚い色になってしまう。例えば赤であれば、紅と黄とを調合して作るのではなく、『金赤』という単一顔料のインキで対応するのが一般的」
では、「金赤」を含めて、シール・ラベル印刷の現場で特色を調合するのに必要なインキは、藍・紅・黄・墨のほか、何色あれがほぼ対応できるのか。
「藍・紅・黄・墨に、『赤金』・『グリーン(草)』・『紫』・『ローズ(牡丹)』を加えた単一顔料でできている8色に、『メジューム』を加えた9種類のインキがあれば、ほぼ色見本にある95%の色をカバーできる。特に、シール・ラベル印刷の現場では、藍・紅・黄・墨・赤金の5色のインキが頻繁に使われている。ちなみに、カラー4色がメインの一般印刷の業界では黄が最も多く使われている」
色を濁すには墨ではなく反対色で
色の彩度を鈍くする(濁す)のに、墨を使うという手法を使うオペレーターも中にはいるようだ。色の彩度を濁す手法として、平面に表した「GATFカラーサークル」が、とても参考になる。
「実際に藍を濁すのに墨を入れると、実際には色が汚れてしまう。実は、GATFカラーサークルでは、Y(黄)・G(緑)・C(藍)・Bv(紫)・M(紅)・R(赤)の向かい合う色を混ぜると墨(正確にはグレー)になるという色相の補色関係を表している。カラーサークルの外側に行けばいくほど彩度が鮮やかになり、内側に行けばいくほど彩度が鈍くなる。この色環状を知っておくと、大変に便利だ。
例えば、藍を濁らせるには墨ではなく、反対色である赤を少しずつ加えていくと濁るということを瞬時に理解できるし、朱色の色合わせの時は黄味もしくは赤味を足せば良いということが分る」
混合比率は多い順から
実は色材を入れる順番も重要なポイントだ。
「例えば4点配合で、藍が73.2%、グリーンが15%、墨が5.9%、紅が5.9%であれば、混合比率の多い順から混ぜていく。また、メジュームが多く入る薄い色は、メジュームから入れていくのが基本。汚す時には、墨を主に使うが、GATFのカラーサークルで紹介したが、紅・金赤であれば藍で、グリーンであれば金赤で汚すという手法もある。
シール・ラベル印刷現場でのインキの調色は、藍・紅・黄・墨・赤金・グリーン・紫・ローズの基本8色でほぼ色見本の95%をカバーできると前述した。
「さらに8色でカバーできる95%の特色も、そのほとんどが3~4種類(平均3.5種類)の色材で作ることができるということを知っておいて欲しい。確かに色合わせは、多くの種類の色材を使う方がやりやすい面はある。しかし、色合わせのレシピに従って調色、特練りするには、できる限り色材を少なくする方が効率的であり、現場にとってもオペレーションがしやすい」
また、調色するインキのサンプル量はどの位の量が適当なのか。
「出来上がりのサンプル量は、10~20gが適当。少なすぎるとレシピの精度が落ちるし、多すぎると作業効率が悪くなるからだ」
色合わせの色の見方
色合わせも重要なオペレーションだ。
「まず、濃度を見本に合わせること。色相は濃度のよって異なって見えるからだ。色相を比較するには、まず濃度から。次に、色相がどちらに振れているかを判断すること。例えば、藍系統の色合わせなら、赤味もしくは黄味、どちらでもなければ色相は合っていることになる。同じように黄系統なら赤味もしくが青味、紅系統であれば黄味か青味というように。この場合も、GATFのカラーサークルを参考にしてもらいたい」
色相の濁りをチェックするにはどうか。
「彩度を確認する。色相がきれいか、濁っているかを見て、見本より鮮やかな色相であれば、汚す必要がある。先にも述べたが、汚すには墨インキを添加する方法と、補色関係にある色を足す方法だ。また、より鮮やかな彩度が求められた時は、特別に設定された紫・グリーン・マゼンタ・ピンク・蛍光色などを選ぶこともできる。しかし、ここで気を付けたいのは、鮮やかな色相を持つ色素は、一般的に耐光性、耐溶剤性、耐薬品性などの耐性が弱いということ。色相を重視するのか、耐性を重視するのか、顧客に確認することが求められる。
調色現場では、“叩き”という手法で色を確認することがある。
「微量のインキを短冊状に切った紙に付けて、指で叩いて紙の上に伸ばしていく。あるいは短冊状に切った紙を2枚用意し、片方の紙に微量のインキを付け、インキを付けていない紙でインキを伸ばしていく。その際も、叩くようにして伸ばしていくのが“コツ”。均一に、一定の膜厚まで伸ばすには、訓練が必要ではあるが、少量のインキで、しかも短時間で色の確認ができるので、この叩きによる色の確認は大変に有効である」
光源の違いによる演色性の差
今回の「色合わせの基礎知識を学ぶ」の中で、外すことができないポイントがある。
光源の違いによる演色性の差、すなわち「メタメリズム」だ。
「屋外(太陽光)では同じ色に見えても、屋内(蛍光灯など)では違う色に見える。あるいは屋内では同じ色に見えても、屋外では違う色に見えること。これがメタメリズムだ」
室内では同じ色に見えたワイシャツとハンカチ。外出してみると、色が合ってないという現象だ。光には、太陽の光や蛍光灯の光など様々な種類があり、波長の強度分布がそれぞれ異なる。
「人間が感じる光の波長は、380nm~780nmと言われている。自然光はほぼ平均的にこの範囲の波長であるのに対し、白熱電灯は短波長の強度が低い」
つまり、自然光と比較して、白熱電灯のもとでは低波長の色(紫や青)が見えにくいということ。
「メタメリズムを防ぐため、標準光源の基準を満たす、太陽光に似た特性を持つ蛍光灯を使用するということを求めたい」
記事のPDFはこちらSandL39
詳しくはhttps://www.nippo.co.jp/sl/をご覧ください。
久保井インキ株式会社