日報ビジネス株式会社発行の「季刊シール&ラベル」38号が発刊され、弊社代表によるコラム「入門 インキの話」が掲載されています。
第7話となる38号は「色の3原色と光の3原色の関係」と題して、CMYKとRGB、減法混色と加法混色や、紫外線の波長、印刷用カラー4色に関する記事が掲載されています。ぜひご購読下さい。
色の原色と光の3原色の関係――
製造の技術・技量が求められる墨(Bk)
久保井伸輔氏 + S&L編集部
印刷ではCMYKの4色で再現するのに対して、パソコンのディスプレイはRGBで表現される。この表現方法の違いにより、CMYKとRGBとでは、表現できる色域も異なる。例えば、デジカメで撮影した写真画像は、パソコンのディスプレイでは鮮やかに映し出されるのに、プリンターで印刷してみると、くすんだ色になってしまうという経験はないだろうか。
今回は当初予定していた内容を変更し、CMYKとRGBの関係について、またCMYKそれぞれの物性や特徴について学ぶことにした。
*久保井伸輔氏(久保井インキ代表取締役社長)の発言箇所は太字に
色の3原色と、光の3原色
小学生や中学生の頃、図画工作(美術)の授業時間に水彩絵の具で混色して色を作り、絵を描いたことがあるはず。例えば、緑(グリーン)であれば、青と黄色を混色して作る。
混色の方式には、「減法混色」と「加法混色」に分けることができるという。
「まず、『減法混色』と『加法混色』の原理の違いを説明すると、色が重なった時に明るくなるのか、暗くなるかの違いであるということを理解しておく必要がある。『減法混色』というのは、絵の具や印刷インキで応用されているもので、色材の3原色であるC、M、Y あるいは藍、紅、黄という言い方もあるが、この3原色によって色相を表現している。『加法混色』はR、G、Bの光の3原色で色相を表現するもので、この3原色の光が全て交わると白色になり、光がないと黒ということになる。これが実際に使われている例として、テレビやパソコンなので液晶モニターなどが代表的なもの」
加法混色の3原色は、色光の3原色と言われ、赤 ( Red )、緑 ( Green )、青( Blue )の3色。これら英語の頭文字から、それぞれR、G、B と略称される。
一方の減法混色の3原色は、色材の3原色と言われ、黄(Yellow)、紅( Magenta )、藍( Cyan )という言い方もする。それら英語の頭文字から、それぞれ Y、M、C とも略称される。
「色材の3原色(CMY)によって表現される『減法混合』は、黄色なら青と赤の光が吸収されて、反射もしくは透過した光を黄色と感じ、色が重なれば、どんどん光が吸収されて黒に近づいていく。また3原色が均等に混ざれば黒になるはずだが、実際にはグレーになってしまう。そこでCMYだけでは画像にメリハリが出ないため、『墨』(K)を加えた4色で印刷をしている」
人間の脳が可視光線の刺激によって感じる。ちなみに人間の視覚は3色型色覚で、人間の目の奥の網膜には一面に光受容細胞(錐体細胞と桿体細胞)があり、光量が充分な場合は3種類からなる錐体細胞が反応する。錐体細胞には、長波長に反応する赤錐体、中波長に反応する緑錐体、短波長に反応する青錐体の3種類があり、この生理学的な事実から、赤(Red)緑(Green)青(Blue)を原色に選んで、いろいろな色を作る方法(RGB モデル)が考えられたらしい。人類以外の哺乳類の中には、2色型色覚が多いとされている。
「一般に人間の脳が刺激を感じる可視光線を分光スペクトルの範囲として、虹色の7色(赤、橙、黄、緑、青、藍、紫)の範囲である400~780nmの波長の領域で、400nm以下の波長は紫外線で、780nm以上の波長領域を赤外線としている。余談になるが、印刷業界で使っているUVインキのUVはウルトラバイオレットの意味で、その波長は280~380nmの領域であり、LED-UVになると385nmとか、395nmの領域になる」
CMYKに求められる特徴とそれぞれの物性
一般に印刷業界のインキに対する認識と、シール印刷業界の認識に、多少齟齬するケースがあるようだ。
「プロセス印刷は、4原色(CMYK)で画像を形成し、できるだけ写真や意匠に近づけようとする。そのために、印刷の順番は墨(Bk)→藍(C)→紅(M)→黄(Y)が一般的で、普遍のルールであり、原理である。この常識が、シール印刷の業界では認識されていないケースをしばしば目にすることがある」
印刷の順番を墨(Bk)→藍(C)→紅(M)→黄(Y)とする条件下で、それぞれの色相に以下の特性が求められる。
「黄(Y):一番上に乗っかるためには、まずは透明性が求められる。下地のインキをできるだけ隠さないように、鮮明な画像を形成するために重要な性能でもある。
紅(M):画像の出来映えを決定する重要な色相だ。できるだけ鮮やかな色相が求められる。
藍(C):紅と同じ重要な色相である。特に、藍・紅、藍・黄、紅・黄の網点で形成される画像が目立つ。インキメーカーが苦心するところでもある。
墨(Bk):画線面積が少ない割には、画像にかっちりしたシャープさを与える重要な色相で、濃度感、網点再現性が求められる」
黄(Y)は「プロセス透明黄」とも言われているほど、透明性のあるインキなので、刷り順は最後というのが常識になっている。
「実はインキの消費量も、一般商業印刷とシール業界とでは違う。まず、一般商業印刷では墨(Bk)の消費量が最も少なく、季節によっても違い、夏をイメージするポスターでは藍(C)が増えたりするが、年間を通して最も消費量の多いインキは黄(Y)。ところが、シール印刷では圧倒的に墨(Bk)が多い」
インキの原料は顔料であり、墨(Bk)であればカーボンブラック、白(W)であれば酸化チタンや炭酸カルシウムなどにように、藍(C)、紅(M)、黄(Y)にも、さまざまな顔料を使われている。
ちなみに日本の顔料メーカーは、DIC(ディーアイシー)、東洋インキ、大日精化工業の3社で、インキメーカー各社はその3社からインキの原料となる顔料を仕入れているという。
ジャパンカラーに準拠も色目に多少の違いも
日本でも印刷の色の共通指標として、「ジャパンカラー」があるが、各メーカーによって藍(C)、紅(M)、黄(Y)のインキに多少違いがある。当然、原料となる顔料の違いによっても異なるが、それ以外にも。
「同じ顔料でも、また同じ樹脂を混ぜたとしても、加温して溶かす温度の違いによっても変わり、透明度なども変わる」
そうした中で、各インキメーカーは日々インキの改良や研究を続けている。例えば、UV硬化性を上げたり、機上の安定性を高めたり、インキの転移性を上げることに各メーカーはしのぎを削っている。
「シール業界で最も多く使われている墨(Bk)が、インキメーカーにとっても製造の技術・技量が求められる。UVの墨(Bk)だけでも、当社だけでも50種以上は優に超える。しかも、シール業者ごと、ブランドオーナーごとに違うものもある」
実は墨(Bk)に匹敵するほど、透明ニスも種類が多いらしい。
ところで、国内のシール印刷におけるインキメーカーは主要4社で国内98%を占めていて、その中で圧倒的なシェアを誇っているのがT&K TOKAで、そのシェアは実に6割を超えているとのこと。残り久保井インキ、東洋インキ、DICの3社がそれぞれ約10%強でほぼ横並びの状態にあるという。
次回は、特色の作り方として、最も望ましい方法を学ぶことする。
記事のPDFはこちらSandL38
詳しくはhttps://www.nippo.co.jp/sl/をご覧ください。
久保井インキ株式会社