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「入門 インキの話 第5回」が掲載されました

  2015年06月30日
日報ビジネス株式会社発行の「季刊シール&ラベル」36号が発刊され、弊社代表によるコラム「入門 インキの話」が掲載されています。
第5話となる36号は「特殊インキには金・銀・パール以外も」と題して、弊社が得意とする示温インキ、香料インキ、蓄光インキ等の記事が掲載されています。ぜひご購読下さい。
 
 
 

入門/印刷インキの話(第5回)

特殊インキには金・銀・パール以外も

示温・香料・蛍光から糊殺しやニスまでも

久保井伸輔氏 + S&L編集部

印刷インキについて学べば学ぶほど、その奥深さに驚く。その種類も、版式(凸版、平版、凹版、孔版)によって異なるし、版の種類(活版、写真版、コロタイプ、グラビア、彫刻凹版、スクリーン、謄写版、ステンシル、水無し平版など)によっても異なる。さらに版材の違いでも異なる。印刷インキはまた印刷機の押圧形式(平圧、円圧、輪転)の違い、被印刷体の形状(枚葉、巻取り、ボトルなど)や、その素材(紙、プラスチック、金属、ガラス、陶磁器、木製品、布地など)に合ったインキがある。しかも紙(コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、合成紙など)も、プラスチック(普通セロファン、防湿セロファン、未処理PE、処理PE、PP、PS、PET、PA、PCなど)も、金属(スチール、ブリキ板、アルミフォイルなど)も、それぞれに適したインキがある。その種類は数千という単位に及ぶのではなかろうか。さて今回は、特殊インキというものについて学んでみることにする。

*久保井伸輔氏(久保井インキ代表取締役社長)の発言箇所は太字に。

白インキの酸化チタンをスクラッチ印刷に

特殊インキには、インキそのものに機能をも持たせたものと、使い方によってそのインキの特殊性を発揮するものがある。

色そのものが特徴的で、メタリック調に輝く光沢のある金インキや銀インキ、パールインキなどは、代表的な特殊インキだ。

まず金インキには、ブロンズ粉と亜鉛の成分比で作られたものと、アルミニウムペーストと透明な黄インキから作られた着色タイプがある。後者は前者に比べ、光輝性に劣るが、経時による金属光沢の低下、耐薬品性、無毒性など優れており、包装材料の印刷などに使われている。

銀インキはアルミニウム粉、もしくはアルミニウムペーストをビヒクル(展色材)に混入して作られている。

絹のような真珠光の光沢で高級感を表現するインキとして、軟包装印刷やパッケージ印刷、カタログなどで利用されているパールインキには、パール顔料をビヒクルに分散させて作るものと、透明で淡色のインキに銀色のパール顔料またはアルミニウム粉を混合して作るものがある。

「金、銀、パールインキついては、パッケージ印刷では一般的に使われている代表的な特殊インキで、最近はシール・ラベルにも使われる機会が増えている」

使い方によってそのインキの特殊性を発揮するものとして、通常は白インキに使われている酸化チタンを含有しているインキがある。

「白インキにはアルミより硬い酸化チタンという金属を顔料にしているが、この酸化チタンの特性を生かしたスクラッチ印刷がある。以前のコインスクラッチは、擦るとカスが出て、そのカスを乳幼児が食べてしまうということがあった。酸化チタンを含有したインキを使ったコインスクラッチは、硬い金属で擦るとカスが出ないが、酸化チタンで印刷した部分だけ濃く発色するというもの。通常の白インキで使われている酸化チタンをメジウムと混ぜたスクラッチ印刷用の半透明のインキは、見た目では分からない特殊インキということになる」

示温インキは化学的ではなく物理的

代表的な特殊インキのひとつとして、示温インキ(サーモクロミックインキ)がある。まさに温度を検知して変色するインキということである。示温材料としては示温顔料を使い、温度がもとにもどっても復色しない不可逆性タイプと、温度がもどると復色する可逆性タイプの二つに分類されるとしている。

発色原理には、固相反応、熱分解、脱水、電子供与体受容体間の電子授受、結晶構造の変化などを利用している。

「一般に可逆性の示温インキは、顕色剤とロイコ色素と溶媒の3種類をマイクロカプセルの中に封入する電子供与体受容体間の電子授受タイプを指す。変色、復色を繰り返すというロイコ色素と、それを促す顕色剤の活用したものは古くからあり、その代表的なものとしてノーカーボン方式の伝票などがある。しかし、顕色剤とロイコ色素だけでは変色はするが復色はしない。これに溶媒を加えることで、ロイコ色素が変色したり、復色したりすることを可能にする。また溶媒の種類を変えることで、変色する温度の領域が変えることができる。示温インキの変化は化学的変化に見えるが、実は物理的に変化しているものだ」

ちなみに久保井インキでは温度領域の設定を変える溶媒としておよそ15~20種類、色数でも約10種類を“レシピ”としてデータに残しているが、市場で動いているのは限られていて、現在は3タイプに絞っているという。

一般的にはスイカやビール、ワインなどで冷え具合を示す“食べごろサイン”や“飲み頃サイン”のラベルなどで使われているが、一部偽造防止用途でも使われているようだ。

オフでも凸版でも香料インキ印刷可能に

 香料インキも特殊インキの代表的なインキだといえる。これもまたマイクロカプセルによるものが多い。印刷皮膜を擦ることで、マイクロカプセルの中から香りがでてくるというインキだ。

 では、香料インキの香りは、あらゆるものに対応できるのか。

「新商品の柔軟剤を発表する際に、その香りを印刷したカタログを、雑誌の付録にしたものもあり、ローズやラベンダー、レモン、ゆず、ストロベリー、バニラ、ミントなどがある。特にラベンダーの香りが人気だ。一部ではあるが、ニンニクの香りを香料インキにといった声もあった。香料インキの香りとして、コーヒーやチョコレートの香りは、なかなか気に入ったものができないのも事実」

 香料インキの場合、印刷方式として従来はシルクスクリーンが一般的だった。もともと香料インキのマイクロカプセルは、直径が5~10μmという大きさだったため、シルクスクリーンでしか印刷ができなかったというのが理由だ。しかし、今日では香料インキのマイクロカプセルの直径を1μmサイズにまで小さくすることが可能になったこともあり、久保井インキではオフセット印刷や凸版印刷でも香料インキの印刷を可能にした。しかも、同じ香料インキで、 オフセットでも、凸版でも印刷ができるという。

「ただし、マイクロカプセルの直径を小さくすることができた反面、インキの出荷量は減ったというマイナス面もあり、今後の市場の拡大が香料インキには求められる」

屋外に不向きな蛍光インキ

特殊インキには蛍光インキ(ブラックライト対応インキ)も含まれる。メジウム(アルミナという白色顔料を含む物質)をベースとして、短波長の光で発光する蛍光物質を混入させた無色透明のインキ。その特徴は目視では確認できないが、ブラックライトを照射すると鮮やかに発光するというものだ。

そのインキの素となる蛍光顔料には、無機蛍光顔料と有機蛍光顔料があるが、無機蛍光顔料は蛍光灯など用途が限られている。一方、有機蛍光顔料は色調が豊富なので、印刷インキとして用いられている。

「しかし、耐光性(耐候性も)がないので、屋外で使用するには不向き。つまり、紫外線に反応するのに紫外線に弱いという、相反する特徴を持ったインキなので扱いにくく、その用途やニーズはごく限られたものになる」

特殊インキには光電管用や糊殺し用なども

そのほか特殊インキには、蓄光インキや赤外線透過インキ、偏光パールインキ、磁気インキ、透かしインキ等々がある。

蓄光インキは、太陽や電灯などの光線を吸収し蓄積し、これを徐々に放出させて発光する性質を持った顔料を含有したインキで、「非常口」や「非常階段」などの誘導標識などに使われていることで知られている。

「蓄光インキの場合、インキとしてもたっぷりと厚盛りしてその機能を発揮するというもので、その印刷はシルクスクリーン印刷に限られ、それ以外の印刷方式での印刷は難しい。

注目すべき特殊インキとして、真贋判定用の赤外線に反応するインキや、見る角度によって色が変わる偏光パールインキなどがある。シール・ラベル印刷やパッケージ印刷で使われることはほとんどない」

シール業界で注目のインキもいくつかある。

「携帯やスマホなどで使われている銘板シールではレーザー照射による印字に対応するインキもその一つ。また光電管(マークセンサー)用の墨インキもシール業界では普及している。印刷機で二回通しする場合、ラベルプリンターで追刷りする場合、またラベラーでも、その精度を保つために光電管マークが必要で、それ専用のインキのこと。通常の墨に比べ濃度があり、乾燥性が良く、密着度が強い。そのほか、糊殺し用のインキも特殊インキの一つ必要になる。特にアクリル系の粘着剤に効くというもので、粘着剤を殺してかためるインキだ。またトップコート用の透明インキ(ニス)も特殊インキだといえる」

次回は、シール・ラベル用UVインキとパッケージ用UVインキについて学ぶことする。

記事のPDFはこちらSandL36
詳しくはhttps://www.nippo.co.jp/sl/をご覧ください。
久保井インキ株式会社

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