先日、近所の映画館に『万引き家族』を見にいきました。
カンヌ国際映画祭で最高賞を受けた話題の作品です。ピークは過ぎていたので客数はそれほど多くなく、いい座席を選べました。
しかし。入場待ちのスペースで、ちょっと嫌な予感に包まれました。
ものすごいデカい声でお喋りしている年配夫婦が私の隣に座ったのです。こういうのを劇場内まで持ちこまれると困ります。
また会話の内容がふざけていて、「そんなに食べたら“満腹家族”やで」とか、『万引き家族』の語感でアレコレと言うので、不快と不安を通り越し、ちょっと面白くなってきた私は目を閉じ心を静め、開場までしばし寝たふりをしていました。
が、お喋りは聞こえてきます。最後にはどういうわけか『万引き家族』は「ふんどし相撲」になっていました。「ふんどし相撲」というのは考えてみれば普通の相撲で、相撲はふんどしでするものですが、私はそういう現実を失いそうになるほどおかしくておかしくて混乱していました。
幸い、その夫婦は劇場内に入るとおとなしくなったのですが、また不運なことに、私の横が酔っ払いのおじさんで、結局集中して映画を楽しむことはできませんでした。出演していた松岡茉優が可愛いなと思った程度です。
昔、無類の映画好きの先輩に「映画は劇場で見ないと“体験”したことにならない」と言われ、そのときは「やかましいわ」と思っていましたが、今回、少しその意味が分かった気がします。事実、内容とは別のところで、なかなか忘れられない映画館体験になりました。
久保井インキ株式会社
営業部 H.I