少し前、業界団体で富士登山に挑みました。
私にとってははじめての富士山です。ウェアと道具はほとんどレンタルで揃えました。
新幹線から降りると、駅から見渡す先には遥かな富士の姿が。
今からこの山を登るのかと思うと、気が遠くなる思いです。
とはいえ、実は、五合目まではバス移動。
それも、いくつかあるルートのうち、もっとも山頂までの距離が短い富士宮ルートです。ただこのルート、後半は少し険しくなっているそうで、容易な道と侮れません。
登山道の入口には、自動販売機が設置されていました。よく見てください。
ごく普通のソフトドリンクが、まず町中では見ない「300円」!
ほとんど喫茶店みたいな値段です。需要と供給によって物の値段が変化するという市場原理がこのような場所でも見て取れます。
登り始めて少しして、すぐ「森林限界」の高度になります。酸素が薄いために、植物が自生できない高さです。森林群が視界の下に去り、山肌がむき出しの道を登っていきました。
そろそろ低酸素が実感として苦しくなってきます。
六合目、七合目。雲の上の世界では、教えてもらった呼吸法を意識しなければ高山病に罹る人も出てきます。
幸い私は何とか持ち堪えていましたが、次に現れた「元祖七合目」という看板を見て、一瞬わけが分からなくなりました。
元祖? さっき確かに七合目という看板を見たはずです。普通なら次は八合目なのですが。
…人に訊いてみると、こんな経緯があって、七合目が二つ存在しているようです。
私は思わず失意のため息を漏らし、深い疲労に襲われました。しかもここからが峻烈な富士宮コースです。ボキッと折れた心を引きずって、黙々と山道を登っていきました。
<続く>
久保井インキ株式会社
久保井 伸輔