息子の大学合格発表前日のことです。
帰宅するとテーブルにケーキとプリンが置かれていました。
何かなと思っていたら息子が買ってきたそうです。
一呼吸置いてから
「1年間浪人させてくれてありがとう。予備校に通わせてくれてありがとう。」
と滅多に口にしない感謝の気持ちを伝えてくれたのです。
子供なりに気を遣っていたんだな、と切々と感じました。
次の日、我が家は朝から重苦しい空気に包まれていました。
正午からネットでの合格発表。
併願の大学には合格をもらってはいるものの、第一志望目指してここまで登り詰めてゴールのテープ直前まで来ました。
各々が時間の経過と共に口数が少なくなっていくのを感じています。
正午になりました。
意を決した息子がひと言
「開くで……」
合格者の受験番号が並ぶスマホの画面をスクロールしながら、自分の番号に近づいてくると一瞬手が止まりました。
「ここからはゆっくり動かすから、えっ?」
続けて
「やった~」と大声で叫ぶ息子。
スマホの画面には前の合格者番号から11番とばしで息子の受験番号が……。
一番ずつスクロールしていくつもりがいきなり自分の番号が出てきたので、驚いたのと間違いないか何回も確認する家族。
「リベンジできたね」と張りつめていた緊張感が解き放たれた瞬間でした。
親類関係に報告をし、入院している私の父親にも連絡を入れました。
わかっているのかどうかはわかりませんが、おそらくわかってくれたんだと思います。
後日、私の兄経由で合格祝いを送ってきてくれました。
震える字で「合格おめでとう」と書いた手紙も添えられていました。
それから約3週間後、父親は息を引き取りました。
まるで合格を見届けるように……。
しかも葬儀と入学式が被らないように配慮してくれたのでしょうか?
葬儀の1週間後に入学式という日程でした。
入学後は片道2時間ちょっとかけて通学しています。
自分のやりたいことがみつかればいいなと願っています。
業務部 M